高血圧症
高血圧とは
高血圧というのは、「血圧が高い」状態をさします。
血圧は、心臓が血液を送り出すときに血管にかかる圧力のことですが、高い血圧は心臓や血管に負担をかけ、さまざまな病気の原因となります。「たまたま測った血圧が高い」ときには「血圧が高い」といえますが「高血圧症」とは言い切れません。「高血圧症」とは、くり返して測っても血圧が高い場合に診断されます。くり返しの測定で診察室血圧(病院で測った血圧)のうち最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧症と診断されます。
血圧は、一回の測定ではなく、くり返し測定することが重要です。
とくに病院で測定すると血圧は高くなることが多いため、自宅での血圧(家庭血圧)の測定が重要になります。
高血圧症の原因
高血圧症の原因として、以下の要因が考えられています。
- 遺伝: 家族に高血圧症の人がいる場合、高血圧症になるリスクが高まります。
- 生活習慣: 塩分の摂りすぎ、肥満、喫煙、飲酒、運動不足などが、高血圧症のリスクを高めます。
- 加齢: 年齢とともに、血管が硬くなったり、弾力性を失ったりすることで、血圧が高くなることがあります。
- その他の病気: 腎臓の病気、ホルモンの異常、睡眠時無呼吸症候群などが、高血圧症を引き起こすことがあります。
高血圧症が引き起こす病気
高血圧症は、放置しておくと、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
- 心疾患: 心不全、狭心症、心筋梗塞など
- 脳血管疾患: 脳卒中(脳梗塞、脳出血)など
- 腎臓病: 慢性腎臓病、腎不全など
- 動脈硬化: 動脈瘤、末梢動脈疾患など
高血圧症の治療
高血圧症の治療は、まず生活習慣の改善から始めます。
- 食事療法: 塩分を控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。高血圧症の原因として、塩分の取りすぎが背景にあることが多いです。
- 運動療法: 30分程度の有酸素運動が目標です。ウォーキングやジョギングなどがおすすめです。
- 減量: 肥満がある場合には、体重を減らすことで血圧は下がることが多いです。
- 禁煙: 喫煙は血圧を上昇させるため、禁煙することが大切です。
- 節酒: 過度の飲酒は血圧を上昇させるため、節酒することが大切です。
- 薬物療法: これらの生活習慣の改善だけでは血圧がコントロールできない場合は、薬物療法を行います。
高血圧の状態でも症状は出ないことが多いですが、将来の心臓病や脳卒中などのリスクを下げることを目的に、高血圧症の治療を行います。
高血圧症の治療薬 種類と働き
高血圧治療薬は、大きく分けて以下の種類があります。
- カルシウム拮抗剤: 血管を拡張させ、血圧を下げます。とくにご高齢の方ではまず使用することが多い基本的な薬剤です。
- ARB: アンジオテンシンII受容体拮抗薬の略で、レニン・アンジオテンシン系という血圧を上げるシステムを抑制することで、血圧を下げます。心不全や慢性腎臓病にも効果のある薬剤です。
- ACE阻害薬: レニン・アンジオテンシン系という血圧を上げるシステムを抑制し、ARBと似た働きをします
- ARNI: アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の略で、ARBとネプリライシン阻害薬であるサクビトリルの複合体です。高血圧だけでなく、心不全にも有効な薬剤です。
- 利尿薬: 腎臓で、塩分と水分を体の外に出す働きを促すことで、血圧を下げます。
- α遮断薬: 血圧を上げる神経の働きを抑えて、血管を広げることで、血圧を下げます。
高血圧と日常生活
高血圧症と診断された場合、治療と同時に、日常生活に注意することが大切です。
- 定期的な血圧測定: 自宅で毎日血圧を測定し、記録しておきましょう。当院では血圧手帳での家庭血圧のチェックを行っています。
- 減塩: 塩分を摂取すると血圧が上がりやすくなるため(※食塩感受性)、減塩が最も有効な高血圧症への対策になります。
- 定期的な受診: 無症状であっても、定期的に受診しましょう。
- ストレスを溜めない: ストレスは血圧を上昇させるため、できればストレスを溜めないように心がけましょう。
- 十分な睡眠: 睡眠不足は高血圧のリスクを高めるため、十分な睡眠をとりましょう。
※食塩感受性について
食塩感受性とは、塩分摂取量と血圧上昇の関係性のことであり、高血圧の一つのタイプです。
私たちの体は、塩分を摂りすぎると血圧が上がるようにできています。これは、腎臓が余分な塩分を尿として出すことで、血圧を調整する仕組みが働いているからです。
ところが、この腎臓の働きが鈍くなっている人がいます。このような人は、塩分を摂ると血圧が上がりやすく、減塩すると血圧が下がりやすいという特徴があります。この体質を食塩感受性といいます。
日本人の約4割が高血圧であり、そのうち約6割が食塩感受性を持つと言われています。
当院での治療
高血圧症は、自覚症状がないことが多いですが、放置しておくと命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。
当院では、まずは家庭血圧の測定と生活習慣の見直しを行い、本当に高血圧症の内服治療が必要なのかをまず患者さんを一緒に考えていきます。その上で、内服薬による治療が必要な方には、内服治療をおすすめしていますが、治療開始後も家庭血圧をみながら薬剤の調整を行っています。
健康診断で指摘された高血圧や、心配なことがある場合は、ぜひ一度ご相談ください。