気胸
息苦しさ、胸の痛みの原因は? 気胸について
「なんだか息苦しい」「胸がチクチク痛む」といった症状を感じたことはありませんか? もしかしたら、それは「気胸」という病気のサインかもしれません。
気胸は、肺に穴があき、肺から空気が漏れてしまう病気です。肺は、私たちが呼吸をするために必要な臓器で、風船のように膨らんだり縮んだりしています。しかし、何らかの原因で肺に穴があくと、空気が肺の外に漏れ出し、肺がうまく膨らまなくなってしまいます。車や自転車のタイヤがパンクするように、気胸は肺のパンクなのです。
このページでは、気胸について、症状、原因、種類、そして治療法について詳しく解説していきます。少しでも気になる症状がある方は、ぜひ最後までお読みください。
気胸とは?
私たちの肺は、肋骨や横隔膜に囲まれた「胸腔」にあります。この胸腔内は陰圧(外の空気よりも圧力が低い状態)に保たれており、肺がしっかりと膨らむのを助けています。
しかし気胸になると、肺に穴があいてパンクしてしまうので、肺からのの空気は胸腔内に流れてしまい、肺はつぶれてしぼんでしまいます。これが、気胸の時に息苦しさや胸の痛みといった症状を引き起こす原因です。
気胸の症状について
気胸の主な症状は、以下の通りです。
- 突然の胸の痛み: 特に、深呼吸や咳をした時に強く感じることが多いです。運動中やジャンプをした時など、なにかきっかけになった行動がわかることもあります。
- 息苦しさ: 軽い運動をしただけでも息切れしたり、安静にしていても、普段と比べて呼吸が苦しく感じることがあります。
- 咳: 乾いた咳が出ることがあります。
- 動悸: 心臓がドキドキするように感じることがあります。
- 肩や背中の痛み: 胸の痛みだけでなく、肩や背中に痛みを感じることもあります。
症状の程度は、気胸の程度や進行の速さによって異なります。軽い気胸では、症状に気づかないこともありますが、重症化すると呼吸困難を引き起こし、命に関わることもあります。
「もしかして気胸かも?」と思ったら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
気胸の原因について
気胸の原因は、大きく分けて2つあります。
- 原発性気胸: 特別な原因がないのに、突然発症する気胸です。主に、肺の表面にできた小さな袋(ブラ)が破れることで起こります。気胸というと痩せている若年男性のイメージがあるかもしれませんが、自然気胸は若い男性、痩せ型、背の高い人に多いと言われています。痩せ型で背の高い男性は、成長期に肺が急に大きくなることで、肺に「ブラ」という小さな袋ができやすい傾向があります。背が高いと肺も縦長になりやすく、肺の上部に負担がかかりやすいことも関係しています。このブラが破れると、肺から空気が漏れて気胸になります。男性ホルモンも影響している可能性が指摘されています。成長期の肺の変化と体型が、若い男性に自然気胸が多い主な理由と考えられています。
- 続発性気胸: 肺の病気(肺気腫、間質性肺炎、肺がんなどの慢性肺疾患)が背景にあり、そこに起こる気胸です。これらの病気によって肺が弱くなっているため、ちょっとしたことで穴があいてしまうことがあります。続発性気胸は、もともと肺の病気が背景にあり起こるため、高齢者や喫煙者に多い傾向があります。
そのほかの原因としては、外傷(交通事故や手術などによる胸の怪我)や、まれな病気(リンパ脈管筋腫症や先天性疾患など)が挙げられます。
気胸の種類について
気胸は、いくつかの種類に分類されます。
- 自然気胸: 上記で説明した、特別な原因がないのに起こる気胸です。
- 原発性気胸: もともとの肺の病気がない人に起こる自然気胸で、若い男性に多いです。
- 続発性気胸: もともとの肺の病気などがある人に起こる自然気胸です。
- 外傷性気胸: 交通事故などの外傷によって起こる気胸です。骨折や血胸(胸腔内に血が溜まる状態)を合併することがあります。
- 医原性気胸: 医療行為(手術や検査など)が原因で起こる気胸です。
- 緊張性気胸: 肺から漏れ出た空気が胸腔内に溜まっていくことにより、心臓や血管を圧迫する、非常に危険な状態の気胸です。呼吸困難や血圧低下などの重篤な症状を引き起こし、命にかかわるため緊急の治療が必要です。
気胸の程度について
虚脱度による分類:胸部X線写真でどの程度肺が潰れているか(虚脱度)を判断し、治療を選択します。以下のように、簡易的なⅠ度からⅢ度までの分類で、虚脱度は評価されることが多いです。
気胸の治療
気胸の治療法は、気胸の種類、症状の程度、患者さんの状態などによって少し異なります。主な治療法は以下の通りです。
- 安静・経過観察: 気胸の程度が軽く、症状も安定している場合は、安静にして自然に空気が体に吸収されるのを待つことがあります。この場合、気胸が悪化してこないかの確認が重要になるため、定期的にレントゲン検査などで経過を観察します。
- 胸腔ドレナージ: 肺に溜まった空気を排出するために、胸に細いチューブ(胸腔ドレーン)を挿入します。チューブは数日間留置し、空気が漏れなくなったことを確認してから抜きます。比較的多くの気胸に対して行われる治療法ですが、入院が必要になることが多く、対応可能な施設で処置を行います。
- 単回穿刺:比較的軽症の場合には、ドレナージチューブを留置するのではなく、その場限りの細い管を使用し、1度だけ空気を脱気・排出する方法がとることもあります。
- 手術: 気胸を繰り返す場合や、ドレナージによる治療で改善しない場合、内科的な治療でコントロールのできない気胸の場合などには、手術が必要になることがあります。手術では、肺の穴を塞いだり、気胸の原因となっている部分を切除したりします。現在では小さな穴を数カ所開けて行う胸腔鏡手術が、体への負担が少なく主流となっています。
- 胸膜癒着術: 手術以外の治療法としては、胸膜腔に薬剤を注入し、肺と胸壁をくっつけて、空気漏れを防ぐ方法があります。
当院での診療
当院では、気胸を疑った場合には胸部レントゲン検査を積極的に行っています。多くの気胸は胸部レントゲン検査で診断することができますが、レントゲンを撮らない場合には診断されないことが多いです。
気胸と診断した場合には、当院には入院施設がないため、適切な治療が受けられる医療機関をご紹介します。気胸は、適切な治療を受ければ、多くの場合は改善する病気ですが、経過によっては重症化する可能性もありますので、気になる症状があれば、ためらわずに呼吸器内科を受診してください。
息苦しさや胸の痛みでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
気胸に関する Q&A (よくあるご質問)💡
Q1. 気胸はどんな症状ですか?自分で気づけますか?
A1. 気胸の最も一般的な症状は、突然の胸の痛みと息苦しさ(息切れ)です。
特に、急に胸が「チクチク」「ズキッ」と痛み出したり、動いていないのに息苦しさを感じたり、深い呼吸や咳がしにくくなったりしたら、気胸のサインかもしれません。軽度であれば症状に気づかないこともありますが、症状を感じたら早めに呼吸器内科を受診することが大切です。
Q2. 若くて痩せている男性に多いと聞きましたが、私でもなりますか?
A2. はい、誰でも気胸になる可能性はあります。
確かに、若い(10代後半~30代)痩せ型の背の高い男性に最も多く発症する傾向があります。これは、成長期の肺の変化や体型が原因で、肺の表面にできた小さな袋(ブラ)が破れやすいためです。
しかし、高齢の方や女性でも、肺の病気(肺気腫など)が原因で起こる「続発性気胸」を発症することがあります。気になる症状があれば、年齢や性別に関わらずご相談ください。
Q3. 気胸は一度治っても再発しやすいですか?
A3. はい、再発しやすい病気の一つです。
特に自然気胸は、一度発症すると、治療法やブラの状態にもよりますが、数年以内に再発する確率が20〜50%程度と言われています。
再発を繰り返す場合や、肺の穴が大きい場合には、手術や胸膜癒着術といった再発予防の治療を行うことがあります。また、禁煙は再発予防のために非常に重要です。
Q4. 気胸になったら必ず手術が必要ですか?
A4. 必ずしも手術が必要というわけではありません。
気胸の治療の方法は、症状や気胸の程度によって異なります。
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軽度の場合: 安静にして、自然に空気が吸収されるのを待つ「経過観察」で治ることもあります。
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中等度〜重度の場合: 肺に溜まった空気を抜くために、胸に細いチューブを入れる「胸腔ドレーン挿入」という処置を行うのが一般的です。
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手術が必要な場合: ドレーン治療で治らない場合、気胸を繰り返す場合、そのほか内科的な治療で問題のある場合には、手術が必要になります。
Q5. 気胸と血胸はどこが違うのですか?
A5. 簡単に言うと、胸に溜まるものの種類が違います。
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気胸: 肺に穴があき、肺の外側の空間(胸膜腔)に空気が溜まる状態。
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血胸: 外傷(けが)などが原因で、肺の外側の空間(胸膜腔)に血液が溜まる状態。
どちらも、肺が圧迫されて息苦しさや胸の痛みを引き起こしますが、血胸は大量出血によってショック状態に陥るリスクもあり、より緊急性が高いことが多いです。
Q6. 気胸を予防するために自分でできることはありますか?
A6. 最も重要な予防策は禁煙です。
タバコは肺の組織を弱くし、気胸の原因となるブラができやすく、破れやすくすることがわかっています。気胸の既往がある方はもちろん、まだ発症していない方も、肺の健康のために禁煙をお勧めします。
その他の予防策として、気胸のリスクが高い方に関しては、急激な気圧の変化(スキューバダイビング、登山など)を避けることも、再発予防には役立つ場合があります。
補足説明:
- 胸腔: 肺を包む膜(胸膜)で囲まれた空間のことです。
- 陰圧: 周りの空気の圧力よりも低い圧力のことです。
- ブラ: 肺の表面にできる、薄い壁でできた小さな袋のことです。
- 肺気腫: 主にタバコが原因で、肺の組織が壊れて、肺が正常に膨らんだり縮んだりできなくなる病気です。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD) : 主にタバコが原因で、気管支や肺の炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気です。
- 胸腔鏡手術: 胸に小さな穴を開け、カメラや手術器具を挿入して行う手術です。
- ドレナージ:体のなかに溜まった不要な液体(血液、膿、空気など)を、外に出すための処置のことで、外に出すためのチューブをドレーンと呼びます。
参考 気胸 <https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/g/g-04.html> (日本呼吸器学会)
この情報が、気胸について理解を深める一助となれば幸いです。
